速度測定サイトを2つ3つ試すと、結果がそろわないことがあります。片方では4Gbps以上出ているのに、もう片方では600Mbps。どちらかが壊れているように見えますが、両方とも正しく測っていることのほうが多いです。
いちばん大きいのは相手のサーバーまでの距離です(測り方の細かい違いもありますが、そこはサイト側の作りの話です)。近いサーバーを使うサイトほど大きい数字が出ます。
そして、この差が極端に開いているとき——近いサーバーだけ速く、遠いサーバーだと何分の1にもなるとき——は、パソコン側に直せる原因があることがあります。
通信は、送ったら相手の受け取り確認を待つ、の繰り返しです。返事を待たずに続けて送れる量には上限があり、これをウィンドウと呼びます。1本の通信の速さは、おおよそ次の式になります。
送れる量が同じでも、相手が遠いほど遅くなります。往復に時間がかかるぶん、待っている割合が増えるからです。
この上限は、本来なら通信しながら自動で広がっていきます。相手が遠ければ広く、近ければそこそこに、といった具合に調整されます。この自動調整が止まっていると、上限が小さいまま固定されます。近い相手なら回数で稼げるので気づきませんが、遠い相手だけ極端に遅くなります。
同じ端末で、設定を直す前に FAST.COM を測ると 4.5Gbps 出ていました。このときつながっていたサーバーはその端末から見て至近で、往復はわずか1ms。一方、東京の測定サーバーまでは13msです。
FAST.COM や Speedtest(Ookla)のように、使えるサーバーが各地にたくさんあるサービスでは、測る人に近いサーバーが選ばれます。近い相手を測れるのは設備が広く行き渡っているからで、その数字は正確です。マジめたは東京にサーバーを置いているので、住んでいる場所によっては遠い相手になります。
| 相手のサーバー | 往復 | 測定結果 |
|---|---|---|
| いちばん近いサーバー | 1ms | 約4.5 Gbps |
| 東京の測定サーバー | 13ms | 約630 Mbps |
距離が13分の1なら、その分だけ速く出ます。1回に送れる量が細いままでも、相手が近ければ待ち時間が短いので取り返せてしまいます。4.5Gbpsという数字自体は正しい測定結果で、「近所までなら4.5Gbps出る」という事実を表しています。
回線会社が用意している測定ページや、動画配信サービスの測定ツールでは何Gbpsも出るのに、ほかの測定サイトだけ数百Mbpsに落ちる。この形が出たら、1回に送れる量が小さいまま固定されている可能性があります。
混雑やパケットの取りこぼしで遅くなっている場合、速度は上がったり落ちたりを繰り返し、グラフはノコギリのような形になります。まっすぐ平らな線は「上限で頭打ち」の形です。この端末の測定では、下りが620〜633Mbpsの範囲でほぼ一直線でした。
回線そのものが細いなら、そもそもどのサイトでも遅いはずです。近い相手だけ速いなら、回線ではなく端末や宅内側に天井があると考えられます。
Windows には「TCP受信ウィンドウ自動チューニング」という設定があります。これが無効になっていると、1回に送れる量が広がらず、遠い相手だけ極端に遅くなります。
コマンドプロンプトで次を実行し、「受信ウィンドウ自動チューニング レベル」の欄を見ます。
normal 以外(disabled・restricted・highlyrestricted)になっていたら、これが原因の可能性があります。
管理者として実行したコマンドプロンプトで次を実行します。
この記事で挙げている端末では、この1行で 約630Mbps → 約4,200Mbps になりました。設定を戻したあとの測定記録は 4,244.9Mbps・4,297.8Mbps です。測定サイト側は何も変更していません。
autotuninglevel= のうしろに入れて同じコマンドを実行します。この設定を「回線高速化」として無効にすることを勧めている記事やツールがあります。古い環境ではそれで改善する場合もあったようですが、いまの高速回線では逆効果になりやすいです。心当たりがあれば確認してみてください。
「近いサーバーだけ速い」という形になる原因は、ほかにもあります。上のコマンドで変わらなかったときは、次を順に試してください。
| 候補 | 確かめ方 |
|---|---|
| セキュリティソフトのネットワーク保護 通信を検査する機能が、自動調整を実質的に無効化してしまうことがあります | 一時停止してから測る |
| ルーターのQoS(優先度の振り分け) 通信の中身を見て優先度を決めるタイプだと、動画配信サービスは上位に、測定サイトは「その他」に振り分けられることがあります | QoSを切ってから測る。機種によってはQoSを有効にすると処理が重くなり、それ自体で頭打ちになることもあります |
| 宅内で必ず通る機器 ルーターやホームゲートウェイの一部の機能が、通信の設定を書き換えていることがあります | 別の機器を直接つないで測る |
測定サイトで数字が違うのは、おもに相手のサーバーまでの距離が違うからです。どれかが壊れているわけではないので、数字の大小を並べて悩む必要はありません。
見るべきなのは、近いサーバーと遠いサーバーの差が極端かどうかです。近い相手だけ何Gbpsも出て、ほかは何分の1にもなる——この形が出たときは、回線ではなく端末や宅内側に天井がある可能性があります。設定1つで6倍以上変わることもあります。